New!Car試乗記
最新モデルや話題のモデルの試乗レビュー
絶品シートの快適コンパクトSUV
今回からホワイトハウスグループのホームページで新しいコンテンツの提供を始めます。その名も「New!Car試乗記」。おかげさまで、チャンネル登録者数30,000人を超えたYouTubeチャンネル「Go!Carチャンネル」のキャスターGocarが、新型車の試乗記をお送りいたします。Go!Carチャンネルと連動し、こちらのページも進めていきますので、お楽しみに。
そんな第1回。最初に取り上げるクルマはマイナーチェンジされた「シトロエン C3エアクロスSUV」だ。世界中で根強い人気を博しているSUV。今となっては、非常に多種多様なSUVが存在し、日本車においてもそのバリエーションは小さなものから大きなものまで驚くほど増殖した。まだ、これからも様々なモデルが増え続けるであろう。
今回紹介するのは、特に個性的なフランスメーカーのコンパクトSUV。「シトロエン C3エアクロスSUV」と“SUV”まで車名に入っているのはメーカーの正式名称ではあるが、本稿では以下「C3エアクロス」としてご紹介していく。
今回は4日間この車をお借りして、300km超のロングツーリング試乗インプレッションをお届けする。
2019年に日本に導入された「C3エアクロス」の初期型モデルは筆者自身かなり気に入り、Go!Carチャンネルでも相当に褒めちぎったレポートをした覚えがある。
SUVのエントリーモデルでも、快適性が高く、運転して気持ちよかったのだ。そのフィーリングは今回のマイナーチェンジでも、クルマを走らせ始めたその瞬間に感じられた。今回、エクステリアのデザインはかなり変わり、従来のカジュアルでファニーなものから、シックな印象へ変わったが、走りの印象はテイストを引き継ぎつつ、より良くなっている。
どこがより良くなっているかというと、着座したその瞬間に「シート」が気持ちいい。C5エアクロスから始まり、その後ベーシックなC3にも採用された「アドバンストコンフォートシート」が今回C3エアクロスにも採用された。従来のシートも決して悪くはなく、むしろ個人的にはざっくりとしたシートの素材と快適な座り心地もかなりお気に入りだった。しかし、それを超えて今回はフィーリングがいい。生地裏のクッションの厚さを2mmから15mmに増しているそうだ。実際に座ってみるとソフトでふわっとした着座フィールであるが、沈み込みすぎて落ち着かない印象ではない、その絶妙な味付けがシトロエンらしいところ。支えるところをしっかり支えている。座面幅はゆったりとしており、300mmを超える(※Go!Carチャンネルでも話しているが、私のような体型の人間には座面幅が300mmを超えるとゆったりと座れる印象が強い)。座面長は500mm前後。今回は長距離乗ったが、本当に疲れにくいシートだった。このクルマはランバーサポートも装備されていないが、腰が痛くなったことは今回なかった。また、コーナーではしっかりと体もホールドしてくれる。また、同じグループのプジョーとは全然違うシートの作りが面白い。プジョーのシートも腰が痛くならず、ゆったりとした気持ちよさが魅力であるが、同じグループのクルマがシートひとつとっても、テイストが全く違うのが面白い。また、そんな機能性を重視したシートだが、ステッチにダブルシェブロンが施されている。こういった“洒落”がいいスパイスになっている。
パワートレインは1.2Lターボエンジンと6ATの組み合わせ。最高出力は130馬力、最大トルクは230Nmを1,750回転という低回転から発揮する。6ATをマニュアルモードにして、小さいエンジンを高回転に回しながら走るという楽しさも味わえる。ただ、現在グループPSAのメインとなってきた8速ATに比べれば、どうしても燃費は悪化してしまうだろうが、街中を走る分には大きな問題はないだろう。
マイナーチェンジでパーキングブレーキのデザインが変わった。近年、電気式パーキングブレーキがメインの中、スティック形状のハンドブレーキは珍しくなってきたが、初期型では扱いにくいとやや感じていたが今回扱いやすくなったのはうれしい。また、電気式が当たり前になってきている中で、ちゃんと操作した感がある旧来のハンドブレーキはなかなか悪くない。
近頃は、電子制御でありふれたクルマが多い。パーキングブレーキは電気式、メーターは液晶、シフトレバーも電気式…。そんな中、少し前まで当たり前だったアナログ満載のC3エアクロスは、懐かしくていい。近頃、高齢者の事故が問題になっているが、電子制御化が進みすぎていて、人間が追い付いていないところもあるのではないか。どのメーカーもこのような旧来からの形で乗れるクルマというのを残しておくのは大切ではないかと感じる。C3エアクロスはそこをあえて狙ってはいないと思うが、結果としていいことだと思った。
そして、やはり乗り味がいい。道路の継ぎ目を超えても、ソフトにしなやかに超えていく。先に挙げたシートとの相乗効果で、シトロエン味をしっかり味わえるわけだ。
インテリアは前期型の明るくカジュアルなテイストから変わって、落ち着いたカラーでシックな雰囲気に変わった。プレミアム感や高級感というテイストではないが、チープには見えない。そこはまさにデザイン力でカバーしているところも素晴らしいところ。
ただ、1点気になったのは、ディスプレイの位置。最近はディスプレイに表示される情報も多く、ディスプレイの位置は高めになっているクルマが多い。安全のことを考えても視線移動が少ない高い位置の方が理にかなっているはずだ。特にこの車はオーディオの操作のみならず、エアコンの操作もディスプレイでするので、もう少しレイアウトが変わっていたらよかったのに、とは思う。
4日間乗っていてつくづく思ったのは、日本で扱いやすいサイズ(全長・全幅)がありがたい。それでいて、SUVらしく全高をしっかりとり、室内空間の広さも気持ちがいい。特に頭上空間が広く、見晴らしがいい。加えて、ボンネットの形状がスラントノーズではなく、ドライバー席から見えやすいデザインで、車両の感覚がつかみやすいのも嬉しい。
高速道路を走ってみたときのエンジン回転は、80km/h走行時 6速ギア1600回転、100km/h走行時 6速ギア 2000回転だった。AL4の4速AT時代に比べれば格段にこれでも満足であるが、やはり最新鋭の8速に比べるとやや回転が高く、燃費にプラスなのは8速に軍配が上がるだろう。
また、高速道路を走る際にはぜひ欲しいACC(アクティブ・クルーズ・コントロール=先行車の速度に合わせて、クルマが自動で加減速する追従機能)が装備されない。一定速を延々と続ける、旧来のクルーズコントロールが装備される。私は普段ACCを使っている一人で、久しぶりにACCなしのクルーズコントロールに乗ったが、やはり不便だった。先行車に近づけば、クルーズをキャンセルしたり、速度を落としたりという操作が増える。
また、フロントガラス上方にカメラが装着されており、道路の白線は認識している。ただし、機能としては「レーンデパーチャーウォーニング」にとどまっており、白線を超えるとアラームする機構しか用意されていない。ひと世代進むと白線を超えそうになるとステアリングを中央の方向へ戻す「レーンキープアシスト」、今の中心は車線の中心を走るようにステアリングを積極的にアシストしていく「レーンポジショニングアシスト」が装備される時代だ。近いサイズの「プジョー 2008」や「DS 3 クロスバック」にはこのレーンポジショニングアシストが装備されていることを見ると、不満点は大きいのは間違いない。ただ、これが機能するのは流れのいい幹線道路や高速道路が中心。街乗り中心の方は大きな問題にはなることはないだろう。年に何度か長距離を乗る方、高速道路に乗るケースが多い方は必要かどうかでクルマをチョイスしていただきたい。今回、横風が強い場面もあり、割と横風の影響を感じた場面も多かった。特にそういった場面でもやはりレーンキープないし、レーンポジショニングアシストは欲しいと感じた。アシスト装置として、斜め後方の死角にいるクルマを教えてくれる「ブラインドスポットモニター」は装備されていた(ただこれももう少し大きなマーキングだと嬉しい)。
80km/hから100km/hへの加速は5速ギアで静かにスムーズに加速していく。低回転からのトルクでぐいぐい加速していく印象だ。とてもバランスがいいし、エンジンを回した時の音もC3エアクロスにマッチしている。
高速道路においても、ソフトでフラットな乗り心地を提供してくれ、ロングツーリングで相当な威力を発揮する。Bセグメントの車でここまで安心しながら気持ちよく快適に乗れるのは本当に素晴らしく思うし、さすがヨーロッパの車だと感じる。加えて、直進性の良さがグループPSAのクルマ全体に言える魅力だ。ステアリングの印象は低速ではかなり軽いが、高速ではしっかり感を増す。長距離で疲れにくい要素はこれも大きくかかわっている。
新車の車両本体価格では300万円をやや超える価格。乗り心地を含めた快適性、エンジンのトルク感、ロングツーリング性能の高さをみればかなりの魅力を感じる一台であった。しかし、一方で先進運転支援に物足りなさを感じるのはやはり事実。実は2年半前に初期型に乗った時には先進運転支援がなくても、それを諦めてもいいほど魅力とお伝えしたが、やはりここまで時代が進んでくると、そうも言っていられない。逆にそこが気にならなければ、きわめて満足度の高い車であろう。
初期型に引き続き、今回のマイナーチェンジでもとてもいいクルマであった。街はSUVでありふれていて、特に国産のコンパクトSUVは、近頃市民権を得たといってもいいほど、売れていて、同じクルマをよく見るようになった。そんな中、C3エアクロスは日本でも扱いやすいサイズを持ちつつ、あまり街では走っていない優越感を感じられるだろう。また、それだけでなくオーナーとして毎日乗っていれば、国産車とは明らかに違うテイストを味わうことができ、楽しい日々が待っているに違いない。少なくとも借りていた4日間、私はとても楽しかった。
<燃費>15.1km/L(315.8km走行・平均車速36km/h)
CITROËN C3 AIRCROSS SUV SHINE(シトロエン C3エアクロス SUV シャイン)主要スペック
全長…4,160mm
全幅…1,765mm
全高…1,630mm
ホイールベース…2,605mm
車両重量…1,290kg
<エンジン・トランスミッション>
排気量…1,199cc
種類…ターボチャージャー付直列3気筒DOHC
最高出力…96kW(130PS)/5,500rpm
最大トルク…230Nm/1,750rpm
使用燃料…プレミアムガソリン
トランスミッション…6速オートマチック
<駆動方式・燃費>
駆動方式…前輪駆動(FWD)
燃料消費率(国土交通省審査値)
・WLTCモード…16.7km/L
・市街地モード…12.9km/L
・郊外モード…16.7km/L
・高速道路モード…19.1km/L
<サスペンション>
フロント…マクファーソン・ストラット式
リヤ…トーションビーム式
<メーカー希望小売価格(2022.1現在)>
303.2万円~(消費税込・SHINE)
Writer
Gocar Gocar