New!Car試乗記
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コンフォート性能第一!400km走ってわかった実力は?!
輸入車の販売の中心といえば「Cセグメント」である。はっきりとした定義はないものの、全長でおよそ4,200~4,400mmのクルマをヨーロッパでは「Cセグメント」として区分けされている。Cセグメントの中心といえば、「フォルクスワーゲン ゴルフ」であるが、最近はプレミアムブランドもCセグメントが用意され、「BMW 1シリーズ」「アウディ A3」「メルセデス・ベンツ Aクラス」といったモデルが存在している。そして、シトロエンの同じグループである、グループPSAには「プジョー 308」や「DS 4」といったモデルが用意されており、日常で扱うのにも使いやすい、各ブランドの味わいをしっかり堪能できたりと、そんな魅力が詰まっているのが「Cセグメント」である。
先代のC4は「シトロエン」という個性的なブランドからすれば、デザインは割とオーソドックスであったが、走りはいかにもシトロエンテイストであり、魅力的なクルマであったが、個性をシトロエンに求めたいと思っている人にとってはやや物足りない部分もあったかもしれない。しかし、今回で3代目となる新型C4はやや全高を高くして、メーカーとしては「SUV」とは言っていない(その証拠にシトロエンのSUVモデルにつけられている「エアクロスSUV」という車名が入っていない)が、ややSUVテイスト、いわゆる“クロスオーバー”タイプの個性的なモデルとして登場してきた。大径で細めのタイヤ、195/60-18というタイヤを履いている点も、明らかに他メーカーのCセグメントとはテイストが違うところが面白い。
ルーフラインはなだらかに下がっており、クーペSUVっぽいテイストに仕上がっている。全高は1,530mm、全幅も1,800mm以下であり、都会のタワーパーキングに対する不安も少ないのも嬉しいところだ。
今回お借りしたグレードは1.5Lのディーゼルエンジンを搭載したモデルであったが、それ以外に1.2Lのガソリンエンジン、そして電気モーターとグループPSAが進めている「パワーオブチョイス」がこのC4でも具現化されている。“十人十色”という言葉があるくらい、ユーザーはそれぞれにクルマをどう使うかが違うわけで、電気が合う人もいれば、ディーゼルが合う人もいる、ガソリンが合う人もいる…そのようにして、ユーザーに選ばせる余地を与えてくれているグループPSAの考えはとても素晴らしいことであると感じる。
この新型C4がおととし、ヨーロッパで発表されてから日本に導入されるのを筆者は心待ちにしていたが、思いのほか時間がかかった。結局その間にクルマを買い替える必要性が出たため、「プジョー 308SW ロードトリップ」の1.5Lディーゼルモデルを筆者は選んだ。308SWの最終モデルは熟成され、本当に魅力的な出来で、筆者のみならず、モータージャーナリストの岡崎五朗氏も、太鼓判を押したモデルである(Go!Carチャンネルでゲスト出演時の映像はこちら)。実際に308SWは大満足なクルマだ。そんな中で、最新のCセグメントのC4が熟成した308とどのようなところが異なっているかといったレポートも併せてお送りしていきたい。
今回新型C4で採用されたプラットフォームは「CMP(コモンモジュラープラットフォーム)」というプラットフォームで、すでに「プジョー 208」「プジョー 2008」「DS 3クロスバック」といったBセグメントですでに採用例があったが、Cセグメントで採用されたのは初めてだ。このCMPには純粋な電気自動車も考慮して設計されているのが特長だ。
今回試乗しているディーゼルエンジンは、直列4気筒の1.5Lディーゼルターボエンジンで、最高出力130馬力、最大トルク300Nmを発揮する。トランスミッションはアイシン製の8速オートマチックトランスミッションが組み合わされる。これは従来から導入されているエンジンと同じで、先に挙げた筆者が乗っている308SWのエンジンと同じだ。このエンジンには筆者自身ほれ込んでおり、C4のそれもやはり魅力は相変わらずのものだ。音の静かさ、滑らかさ、トルクが大きい、アイドリングストップからの再始動もスムーズ。素晴らしいエンジンである。
また、結構こまめに「コースティング」に入る。基本はエコモードで入るようだが、ノーマルモードでもコースティングに入るシチュエーションがあった。エンジン回転数が700回転になり、アクセルペダルを放していても、エンジンブレーキがかからず惰性で速度をそれほど落とすことなく走ることができる。これは30~40km/hあたりでも、高速域でもコースティングに入る。
驚いたのは平たん路でアクセルオフで、コースティング状態に入って、そのまま下り坂に入ったら、自動的にコースティングは終わり、エンジンブレーキがかかるようになる。下り坂で速度がどんどん上がっていかないような配慮はありがたいところだ。なお、速度の影響がそれほど大きくなさそうな緩い下り坂はコースティングを保っていた。制御が実に細かく、感心した。
ドライブモードスイッチで、「エコ」「ノーマル」「スポーツ」と選べるのだが、今回のC4はそれぞれのモードがかなり顕著で、違いがはっきりとわかりやすくなっていた。
新型C4でメーカーが大きくアピールしているのはサスペンションである。「PHC」と呼ばれるサスペンションは「プログレッシブ・ハイドロ―リック・クッション」の略で、すでに「C5エアクロスSUV」で採用されている。詳細なメカニズムはメーカーのホームページを参照いただきたいが、メーカーは「ハイドロニューマチックの現代的解釈」と言っている。
ハイドロニューマチック、のちに電子制御化され「ハイドラクティブ」という名のシトロエン独自のサスペンションは窒素ガスとオイルを用いて、まるで水の上に浮いているかのような独特の乗り味で、コーナーでのロールも抑えられる、実に不思議なサスペンションであった。C4の先祖ともいえる「BX」、そしてその後「エグザンティア」や「C5」「C6」に採用され、日本でもシトロエン好きにはとても好まれていたサスペンションである。
さすがに、ハイドロの乗り味そのままとは言えないが、あたりのソフトな印象、路面の凹凸を受け止めたときのフィーリングはなんとなく懐かしさを感じる。実はC5エアクロスに試乗した時よりも、より好印象を抱いたC4の乗り味である。きっとC4の車両重量の軽さも寄与しているのではないだろうか。
正に気持ちのいい乗り味で、今回4日間借りていて、わざと路面の悪い道路を走りに行きたくなるほど、“マジックライド”な印象である。きわめてこのPHCの効果は大きいということがよくわかった。これは低速、中速、高速、どのシチュエーションにおいても効果的であった。
タイヤは冒頭にもレポートした通り、特殊なサイズではあるが、ミシュランの「Eプライマシー」というタイヤを履いていた。このタイヤとのマッチングもきっといいのであろう。
また、乗り味に関してはシートによるところも大きい。「アドバンスドコンフォートシート」というクッションの厚みを15mmにしたシートもとても気持ちがいい。座面幅は30cm以上、座面長も他のシトロエンのクルマよりは長めにとってあり、ソフトな乗り味と相まって、気持ちいい乗り味を提供してくれる。
グループPSAでは多くのクルマが標準で装備されるようになった、先行車に追従しながら、先行車の速度に応じて加減速もしてくれる「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」だが、今回のC4から操作スイッチがステアリングコラム(ステアリングの後ろ側)から、ステアリングスイッチへと移設された。これは以前からGo!Carチャンネルでも改善提案を続けていた(ステアリングのスポークにスイッチが隠れており、どのスイッチがどの機能なのか慣れていないとわからなかった)が、今回はわかりやすくステアリングのスイッチになったのは嬉しいところである。「ASSIST」というスイッチがあるが、これを1回押せば「ACCのみ」、2回押せば、ステアリングを車線中央に維持する「レーンポジショニングアシスト+ACC」の機能に切り替えられるのもわかりやすい。レーンポジショニングアシストは高速でも、渋滞路でも忠実に作動しており、ドライバーの疲労負担軽減に役立った。この辺りは熟成を重ねて、よくなってきているという印象である。レーンポジショニングアシストに関しては左寄り、右寄り、中央寄りというように選べるのもグループPSAの特長だ。
また、「トラフィックジャムアシスト」という機能も備わり、先行車が停止すれば、自車も自動的に停止するが3秒以内に先行車が再発進すれば、ドライバーは特に操作なしでも再発進してくれる。3秒以上停止していれば、アイドリングストップに入る。逆に先行車が発進すれば、自動的にエンジンがかかり、ドライバーの再発進指示にすぐ従えるようになっていた。このような細かな配慮が、実に嬉しいところである。
今回シフトセレクターがスイッチ方式(Eトグル)に代わり、近頃ヨーロッパの一部のメーカーではこの形式が増えてきており、グループPSAもこの形状に統一されていくようだ。
高速道路を走ってみて、80km/hでのエンジン回転数は7速で1,600回転である。100km/hでは8速で1,600回転、7速で2,000回転、6速で2,400回転、5速で3,000回転、4速で3,600回転であった。パドルシフトが装備されているが、これまではステアリングコラムに装着されており、ステアリングを回してもパドルは動かなかったが、今回からステアリングに装着されるようになった。
私の乗っている308ではパドルシフトを操作して、エンジンブレーキをかけて長い下り坂を下がっている場合、途中で勝手にシフトアップされてまた、操作する…ということがあるのだが(事前にシフトレバーにあるマニュアルモードを選べばいいが)、このC4は長い下り坂でも勝手にシフトアップすることはなかった。アクセルを踏んで、ギアを上げてもよさそうだなとクルマが認識してからシフトアップしてくれる。このあたりも地味ながら人間の感性に近いのが嬉しい。
今回のC4で驚かされたのは装備の充実度である。ステアリングヒーターも装備されていて、1分もしないうちにステアリング全体が暖かくなった。さらに、シートヒーターも装備されており、今回の試乗にはとても重宝した。シートヒーターに関しては、エンジンをOFFにしてもシートヒーターの強さ、ONの状態を記憶しているのも嬉しいところであった。
またスライディングルーフもシャインには標準装備である。チルトアップ機構、スライド機構の両方が機能されている。個人的にはもう少し開口幅があると嬉しいと思うが、アウタースライド方式で室内空間が犠牲になることなく開放感が得られるのは嬉しい。
シートにはランバーサポートが用意されているが、「アクティブランバーサポート」という簡易的なマッサージ機能も用意されている。腰のランバーサポートの出したり引いたりを連続させて作動させる機能だ。これも長距離ドライブではなかなか嬉しい機能である。
また、センターディスプレイもインチが大きくなったのが嬉しい。表示内容は大きく変わらないが、10インチのディスプレイが採用された。これまでは日本のナビゲーションを埋め込むために日本特有のやや小さめのディスプレイが採用されていた。今回は日本のナビゲーションのオプションはなくなったが、スマホをお持ちの方はアップルカープレイ、アンドロイドオートを使うことで、スマホのナビアプリを使う方法がある。ただ、今回困ったのはこのアップルカープレイを使おうとした場合、USBのタイプCでないとデータやり取りができず、従来のタイプAは充電専用となっているところだ。タイプC用のケーブルを持っていない方は、オーナーになってからまずはUSBタイプCとスマホをつなぐケーブルを手に入れたほうがいいだろう。
もう一つ地味ながら嬉しかったポイントはエアコンの物理スイッチが復活したことである。従来はディスプレイで操作をする必要があり、階層も増え、いい方式とは思っていなかったが今回から物理スイッチでエアコンの操作ができるようになったのもいいところである。温度表示はディスプレイの高い位置なので視線移動が少なくなっているのもいい。
気になったポイントとしては、他のグループPSAのクルマと同様に、斜め後方の死角にいるクルマを教えてくれる「ブラインドスポットアシスト」の表示が小さいのと、かなり近づいてこないと点灯しないこと。あくまでもアシスト装置なので、頼りすぎはよくないが、他メーカーのクルマがもう少し大きな警告ランプ、遠方からの警告をしている場合があるのを見ると、より進歩したブラインドスポットモニターが欲しくなる。
今回はおよそ400kmを走行し、車載の燃費計では21.2km/Lをマークしていた(平均車速36km/h)。ただ、これは撮影用にアイドリングを長時間していた場合も含まれていたため、それを除いたパターンだと23.8km/Lをマークしていた(260km走行、平均車速45km/h)。細かな制御により、同じ1.5Lディーゼルでも明らかに筆者の乗っている308よりも燃費が良くなっている印象だった。
そして、何よりも装備の充実度と価格のバランスは本当に驚かされたところである。乗り味の良さは昔からのシトロエンの見所であったが、近頃はそれに充実した装備、それも先進装備に加えて、快適装備も非常に充実している。それでいて、価格も相当魅力的。このバランスが近頃のグループPSAは非常に魅力だ。
CITROËN C4 SHINE Blue HDi(シトロエン C4 シャイン ブルーHDi)主要スペック
全長…4,375mm
全幅…1,800mm
全高…1,530mm
ホイールベース…2,665mm
車両重量…1,380kg
<エンジン・トランスミッション>
排気量…1,498cc
種類…ターボチャージャー付直列4気筒DOHC(ディーゼル)
最高出力…96kW(130PS)/3,750rpm
最大トルク…300Nm/1,750rpm
使用燃料…軽油
トランスミッション…8速オートマチック
<駆動方式・燃費>
駆動方式…前輪駆動(FWD)
燃料消費率(国土交通省審査値)
・WLTCモード…22.6km/L
・市街地モード…19.1km/L
・郊外モード…22.4km/L
・高速道路モード…24.7km/L
<サスペンション>
フロント…マクファーソン・ストラット式
リヤ…トーションビーム式
<メーカー希望小売価格(2022.1現在)>
290万円~(消費税込・フィール(受注生産))
Writer
Gocar Gocar
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。