New!Car試乗記
最新モデルや話題のモデルの試乗レビュー
12年ぶりの復活!フレンチサルーン
“セダン離れ”という言葉が聞かれるようになり久しいが、それにしても日本のみならず世界中が「SUV=スポーツ・ユーティリティ・ビークル」にとことん人気が集まっている昨今。旧グループPSA、現在のステランティスグループのプレミアムブランドを担う「DSオートモビル」もこれまで、「DS 7クロスバック」や「DS 3クロスバック」といったSUVのモデルしか用意されていなかった。しかし、プレミアムブランドといえば、必ず「セダン」が用意されており、DSのセダンはいつ出るのだろう…と筆者も待ち焦がれていた。
しかし、今世界でセダンが人気の市場は「中国」。ヨーロッパや中国への導入が優先され、日本への導入が遅れてしまったからこそ、待望の日本導入である。本国で発表された写真を見ては、楽しみで仕方ない1台であった。
そして、今回やっと日本へ導入され、試乗することができた。今回、「DS 9」はガソリンと、プラグインハイブリッドの2本立てで、ディーゼルは用意されない。試乗したのは旧グループPSAではおなじみの1.6Lガソリンターボエンジンを搭載したモデルである。このパワートレインのラインナップからしても、やはり中国市場をかなり重視していることがよくわかる。
まずインテリアに乗り込んで感じたのは「DS 7クロスバック」のインテリアに非常に似ているところだ。先に紹介した「DS 4」は最新モデルらしく、すべてが新しかったが、日本へ導入された時期は近かったものの、本国での発表は早い時期だった「DS 9」は先に登場している「DS 7クロスバック」のインテリアに極めて近い。B.R.Mの時計が立ち上がったりするあたりも共通である。しかし、ワイン系のインテリアカラーはさすがといった印象である。また、インパネの仕上げかた、ルーフ、グリップあたりの高級感はさすがフラッグシップモデルである。
「DS 7クロスバック」や「DS 4」でも採用されていた「DSアクティブスキャンサスペンション」が装備されている。フロントに装備されたカメラで道路の先を読んで、サスペンションの味付けを最適化するというものである。「コンフォート」モードにすると、この機能が働く。「DS 7クロスバック」では、この機能に関してとても感激したし、この前に試乗した「DS 4」でも魅力を感じたが、実は「DS 9」ではそれらのような感激にはやや欠けるところがあった。一つの要因はタイヤがコンフォート系ではなく、ミシュランの「パイロットスポーツ4」というスポーツタイヤを履いているからかもしれない。また、プラグインハイブリッドとガソリンでは重量もおよそ300kg差があり、今回乗ったガソリンモデルに関しては、高級感らしい重厚感という雰囲気とは少し異なっていた。
「スポーツ」モードにすると、乗り味はやはりかなり固めになり、路面のざらつきをよく感じるようになる。快適志向の「DS 9」は「コンフォート」モードがピッタリな印象だった。街中では「エコ」モードで十分な印象だ。
プレミアムカーらしく、感心させられたのは音の静かさだ。特にロードノイズの静かさなども感心させられた。
このクルマのセグメントの中心はやはりドイツ車であるが、日本において特に「スポーツパッケージ」的なモデルが多い中で、この「DS 9」はそれらとは違うベクトルを目指しているのが嬉しいところだ。
「DS 9」は後席もかなり重要視しているようである。後席に座るととにかく広い。膝回り空間は20cm以上あいている。流麗なデザインで、頭上空間の心配をしていたが、その心配もなくゆったり座れた。また、今回の「オペラ」には後席のマッサージ機能、シートヒーター、ベンチレーションが用意されている。これでも相当驚かされるのだが、さらに後席が可倒式になっているのにも驚かされた。実用性も考えているあたりは、さすがフランス車である。
乗り味は後席に乗ってもやはり想像していたような、フランス車らしいソフトな味ではなかった。
筆者が注目する3つのポイント
①フランス車ならではのセダンの魅力
エクステリアデザイン、インテリアデザインとも、ドイツ勢のような「スポーツ」仕立てのようなモデルではなく、エレガントさを重視したベクトルは希少である。後席のゆとり、後席での快適性はドイツ車にはない魅力だと感じた。
②C5やC6のような特徴は受け継いでいるのか
以前のシトロエン系のサルーンのような個性はあまり感じられなかった。文中でも申し上げた通り「DS 7クロスバック」に近い雰囲気を醸し出しており、SUVにはあまり興味がなかったが、DS 7の個性が気に入っていた方にはピッタリなクルマだろう。
③後席の快適性
広さ、快適装備、背もたれの角度など、後席をかなり重視している一台であることが実感できた。
ただ、一方で全体的に「乗り味」に関しては、事前に期待していた「DS」らしい乗り味とややテイストが違った印象に感じたのは事実である。かなりコンフォート性を重視したモデルでありながら、235/45R19という太くて、偏平率の低い、スポーツタイヤを履いているのが少し影響しているのではないかと感じた。また、もう一つ感じたことは「DS 9」の本命はPHEVモデルかもしれないというところである。車両重量を増して、どっしりとしたフィーリングがきっと感じられ、「DSアクティブスキャンサスペンション」の効きがより感じられるのではないかなと期待する。今回は試乗できなかったが、またPHEVモデルの試乗車が用意されたら取り上げてレポートしたい。
DS 9 OPERA PureTech(DS 9 オペラ ピュアテック)主要スペック
全長…4,940mm
全幅…1,855mm
全高…1,460mm
ホイールベース…2,895mm
車両重量…1,640kg
<エンジン・トランスミッション>
排気量…1,598cc
種類…ターボチャージャー付直列4気筒DOHC
最高出力…165kW(225PS)/5,500rpm
最大トルク…300Nm/1,900rpm
使用燃料…無鉛プレミアムガソリン
トランスミッション…8速オートマチック
<駆動方式・燃費>
駆動方式…前輪駆動(FWD)
燃料消費率(国土交通省審査値)
・WLTCモード…15.0km/L
・市街地モード…11.9km/L
・郊外モード…14.7km/L
・高速道路モード…17.2km/L
<サスペンション>
フロント…マクファーソンストラット
リヤ…マルチリンク
Writer
Gocar Gocar
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。