New!Car試乗記
最新モデルや話題のモデルの試乗レビュー
今回は特別企画としてアウディのハイパフォーマンスモデルの比較試乗をお送りする。1台は「RS e-tron GT」である。このクルマのパワーユニットは完全電気自動車だ。そして、もう1台は「RS 7 スポーツバック」である。こちらはマイルドハイブリッドを搭載したV8エンジン搭載車である。

試乗車はRS e-tron GTが2063万円(オプション込・右)、RS7スポーツバックは2262万円(オプション込・左)である。
今回はスラロームテストや、加速テストなど通常しないレポートもお送りしているが、こちらに関してはぜひ動画をご覧いただきたい。
今回「RS e-tron GT」に関しては、一般公道と高速道路での試乗をすることができた。

ここまで低さを強調したクルマは近頃では珍しいが、空気抵抗係数を下げ、全面投影面積を小さくすることで、空気抵抗を極力下げたいという意図なのだろう。
ベースとなるのは「e-tron GT」であり、さらにパワーを増し、ハイパフォーマンス仕立てにした「RS」モデルという成り立ちは、内燃機関モデルと同じである。
もちろん、電気モーターは前後に配置される。機械式ではないので、前輪と後輪がプロペラシャフトでつながって…ということはない。電気式クワトロである。機械式のクワトロよりもより速く、前後の駆動力配分を可変することができるそうだ。ちなみに、前100:後0から、前0:後100まで駆動力配分は変わるとのことである。

流麗なクーペ風のスタイリングであるが、トランクは独立した3BOXタイプである。

ホイールは21インチ。乗り味はこんな偏平率の低いタイヤでも乗り味はいい。エアサスペンションが装着されている。
まず街中を走ってみるとかなりボディサイズは大きく、最初乗り始めるとやはりサイズ感を感じる。特に全幅は1,965mmもある。さらに、着座点も低いため、SUVのように車両感覚がつかみやすいということには欠ける。ただ、このクルマも360°カメラを装備しており、前輪や後輪も表示することができるので、幅寄せなどもしやすい。アシスト機能としては充実したものである。
走り始めると、全くの無音ではなく、何か先進的な…不思議な音が聞こえる。そんな演出にしているのであろう。
パドルシフトが装備されており、回生ブレーキの強さを切り替えることができる。長い下り坂を下る際にはとても重宝するだろう。

インテリアの雰囲気はBEVモデルであろうと、内燃機関モデルに共通したアウディテイストである。
アウディドライブセレクトでモード切替ができるのは内燃機関のアウディと同様である。「エフィシェンシー」モードにすれば、より経済的に走れるということで、パワーが抑えられるが、街中を流れる分には大きな不満はない。ただ、夏場でエアコンをより利かせているときには、「エフィシェンシー」モードに入れると、途端にエアコンが弱くなり、快適性は落ちる印象であった。
荒れた路面を走ってみると、21インチの大径ホイールを履いた低偏平タイヤとは思えない、気持ちのいい乗り味を提供する。エアサスペンションが装着されている。硬いか柔らかいかと言われれば、ドイツ的な硬めの乗り味だが、荒れた路面でも道路の粗さをドライバーにそれほど不快に感じさせない乗り味には驚かされた。「ダイナミック」モードにすれば、より足回りは確かに引き締まって、固めの印象にはなるが、そこまで大きく乗り味がスポイルされないあたりも驚かされた部分である。
基本コンポーネンツは「ポルシェ タイカン」と共用している「アウディ e-tron GT」であるが、この背の低いクルマに大容量のバッテリーを搭載するのはなかなか難しいはずだ。最近は様々なメーカーから電気自動車が出てきているが、SUVが多い。もちろん、SUV人気だから…というところもあるが、全高が高いため、大容量のバッテリーを搭載しやすいというところもある。しかし、今回試乗している「RS e-tron GT」は93.4kWhという大容量バッテリーを搭載しているのは、車両のパッケージングの巧みさがうかがえる。
それでは高速道路を走ることにするが、高速道路に流入する前のカーブなどでも、電気式クワトロの安定感と、背の低さ、重たいバッテリーを床に敷き詰めている等の理由から、“オンザレール”感覚で、ほとんどロールを感じさせずに、コーナーをトレースしていく。
高速道路を走り始めて一番気になる音は「ロードノイズ」である。太いタイヤを履いているということもあり、どうしても気になってしまうようだ。ただ、舗装の新しいところならばそれほどロードノイズも気にならなかった。
高速道路を走っているときに、ピタッと路面にへばりついたような安心感は相当いい。雨の日に乗ってみたいと感じさせられる1台である。まさに、「GT」=「グランドツーリング」=「グランツーリスモ」にピッタリなクルマの特性を持っている。
「オールホイールステアリング(AWS)」、いわゆる4輪操舵が装着されている。低速では逆位相(前輪の向きとは逆の方向)にきることで小回り性能を向上して、高速走行では同位相(前輪の向きと同じ方向)にきることで、車線変更などはスムーズに俊敏にすることができる。

オールホイールステアリング=4輪操舵。低速では後輪は逆位相にきれる。
高速道路を淡々と走るのは本当に気持ちのいいクルマである。
気になったのは後方視界が少ないことである。後ろの窓ガラスの面積が少なく、後方の状況が少しわかりにくいのが気になった。

スタイリッシュなのはわかるが、その分後方視界が削がれているので、そこは認識しておいた方がいい。
電気自動車になったから…と何か不満に思える点は実際の走行性能上では感じることがなかった。むしろ、車名の「GT」が示す通り、ここまでグランドツーリングに適したモデルであるということに痛感させられた今回の試乗であった。もっとバッテリーの効率が上がり、今のバッテリー容量のままで、もう少し長距離が乗れるか、もっと容易に充電ができるようになれば、かなり魅力に感じられる1台であった。
次回は比較の後編「RS7 スポーツバック」を取り上げる。

シートは最初、掛けたときには硬いなぁと感じたが、乗り慣れると不満に思わなくなった。また、アウディらしく座面幅がゆったりしているのもいい。

大きなディスプレイが装備されているが、上級モデルのような、操作に応じてクリック感が返ってこないのが残念。

筆者は安全上の理由から、エアコンの操作系を液晶パネルにするのは賛成していない一人なので、e-tron GTの物理スイッチは大賛成。

急速充電ポート。

普通充電ポート。
Audi RS e-tron GT(アウディ RS e-tron GT)主要スペック
全長…4,990mm
全幅…1,965mm
全高…1,395mm
ホイールベース…2,900mm
車両重量…2,320kg
<原動機>
種類…交流同期電動機
定格出力…250kW
最高出力…475kW(637PS)
最大トルク…830Nm
<駆動用バッテリー>
種類…リチウム・イオン電池
総電圧…723V
総電力量…93.4kWh
交流電力量消費率(WLTCモード)…200Wh/km
<駆動方式・一充電走行距離>
駆動方式…quattro(4WD)
一充電走行距離(WLTCモード)…534km
Writer
Gocar Gocar
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。