New!Car試乗記
最新モデルや話題のモデルの試乗レビュー
正常進化したフレンチCセグメント
プジョーの中心的なモデルともいえる「308」。従来は「306」、「307」、「308」…と本来ならば、世代が変わるごとに、一の位の数字が増えていくのが10~15年くらい前までの定例だったが、現在は一の位を「8」に固定している。だから、「308」というネーミングとしては今回が3代目である。今回は、先行してインポーターの試乗車をお借りすることができ、速報で新型308の魅力をお伝えする。
新型の308には先代モデル同様、5ドアのハッチバックと、全長を伸ばし荷室空間を広げた「308SW」が用意される。そして、1.2Lのガソリンターボエンジン、1.5Lのディーゼルターボエンジン、1.6Lガソリンターボエンジン+電気モーターのプラグインハイブリッドの3つのパワーユニットが用意されている。その中から、今回試乗したのは1.5Lディーゼルエンジンを搭載した、ベーシックグレードの「アリュール」である。
筆者は実は先代の308SWの1.5Lディーゼルエンジンを搭載した最終モデルのオーナーでもある。先代モデルも登場した当初から、非常に出来が良かったが、年々改良を重ねたり、エンジンが改良・変更されたりして、最終モデルの308も実に満足度の高いクルマだった。新型が出るのを知っていながら、先代の最終モデルを買い、すでに20,000kmを超えたが実に乗り味も気持ちよく、1.5Lディーゼルの出来の良さ(音の静かさ、燃費の良さ、トルクの太さなど)に大満足している。新型も果たして魅力的なクルマになっているかどうかも含めて、検証していきたい。
プラットフォームは「EMP2」と呼ばれるプラットフォームで先代からのキャリーオーバーのように思われるが、実は「V3」と名付けられており、かなり手が加えられた改良版のプラットフォームである。
最初にこの新型「308」に乗り始めたときの第一印象は「正常進化」ということだ。走りのフィーリング、味付けはまさに先代の308のいいところをしっかり受け継いでいる。加速のフィーリング、ステアリングをきったフィーリングはまさにプジョーテイストで、自分の思ったように曲がっていくのが気持ちいい。また、ディーゼルエンジンは重たいといわれるが、この1.5Lディーゼルは軽く、軽快感を感じるのが魅力的である。このエンジンは音も静かで、十分な力があり、実にバランスのいい惚れ惚れするエンジンだ。モード切替機能も付いていて、エコモードにするとコースティング(惰性)モードに積極的に入っていた。より燃費を向上することができるだろう。
メーターの表示が完全に刷新された。液晶の面積自体はそこまで大きい印象はないが、必要な情報をしっかりと表示してくれる。先代の最終モデルも液晶メーターになったが、デザイン自体は全く異なっている。また、このメーターのカラーをいろいろ好みで変えられるのがユニークである。
そして、やはり走り始めて嬉しいのは「猫足」のテイストが残っていることだった。実はタイヤに大きな変更点があり、225/45R17という幅が広く、偏平率の低い、17インチホイールを履くようになった。ぱっと見、乗り味に悪影響があるのではないか…という不安が少しあったが、そのあたりはさすがプジョー。しなやかで、足をしっかりと動かした気持ちのいい乗り味を提供してくれた。
近頃では同じグループのシトロエンでは「C4」、プレミアムブランドの「DS」では「DS 4」と、このCセグメント系のモデルが続々登場しているが、どれもさすがフランス車らしい気持ちのいい乗り味を提供しているが、「味」がそれぞれ全然違うのが面白い。一番わかりやすいのは明らかに柔らかい味の「C4」であるが、それぞれに良さがある。これは好みもあるので、実際に乗り比べていただいて、ご自分の理想を見つけてもらいたい。
センターのディスプレイも大型化され、表示自体が全く新しいものに変わった。今回試乗したアリュールは「コネクティッドナビゲーション」が装着されないため、先代モデル通り「Apple Car Play」もしくは「アンドロイドオート」でのナビゲーションにする必要があるが、GTモデルだとより先進的な印象を得ることができるだろう。
今回は高速道路の試乗をすることもできた。1.5Lディーゼルエンジンは低回転から大きなトルクを発揮するため、グイグイどんどん加速してくれる。これぞ、ディーゼルエンジンの醍醐味である。時速100kmで8速のギアでエンジン回転は1,500回転ほどだ。
ACCも装備され、高速道路でのドライバーの疲労負担を軽減してくれる。さらに、操作スイッチはわかりやすいようにステアリングスポークに移設されたのもよかった。先代の最終モデルでは先行車に追従して完全停止を車両側がしてくれるところまではよかったのだが、再追従をしようとすると時速30kmまで上げてレジュームスイッチを押す必要があった。しかし、今回は停車状態で再追従できるようになったのは渋滞路では嬉しいところである。
ただ、今回のアリュールで残念だったのは「レーンポジショニングアシスト(車線維持支援システム)」が装備されていないところだ。GTには装備されているし、他のモデルでもかなり普及してきているのに、アリュールに装着されていないのは残念なところだ。ただし、白線を超えそうになるとステアリングを戻してくれる先代同様「レーンキープアシスト」は装着されている。
また、ブラインドスポットモニターがロングレンジになり、以前より遠方から近づくクルマに反応するようになったのも嬉しいところである。ただ、その表示に関しては先代と変わらずやや小さな●が光るタイプ。実は「DS 4」では大きな▲に代わっていたため、この308も大きな表示にしてほしかったと感じる。
また、後席にも座ってみた。後席でもやはりプジョーらしいしなやかな乗り味を味わうことができる。そして、頭上空間の広さもいいところだ。センターからアームレストを出して、ドア側のアームレストと相まって、ゆったりと座ることができる。シートはソフトで気持ちのいいフィーリングだ。
乗り終えて、やはり先代モデルからの正常進化で、「308」のこれまでのモデルの良さをしっかり引き継いでいて、インフォテイメント系が新しくなっているのが魅力だ。猫足のしなやかな足回りはいつの時代も変わらないというのが嬉しい部分である。今回は限られた時間の中での試乗だったが、ぜひ次回はじっくりと308を味わって魅力を掘り下げたいし、1インチアップするGT系はどうなのかもレポートしたい。
PEUGEOT 308 Allure BlueHDi(プジョー 308 アリュール ブルーHDi)主要スペック
全長…4,420mm
全幅…1,850mm
全高…1,475mm
ホイールベース…2,680mm
車両重量…1,420kg
<エンジン・トランスミッション>
排気量…1,498cc
種類…ターボチャージャー付直列4気筒DOHC(ディーゼル)
最高出力…96kW(130PS)/3,750rpm
最大トルク…300Nm/1,750rpm
使用燃料…軽油
トランスミッション…8速オートマチック
<駆動方式・燃費>
駆動方式…前輪駆動(FWD)
燃料消費率(国土交通省審査値)
・WLTCモード…21.6km/L
・市街地モード…17.1km/L
・郊外モード…21.6km/L
・高速道路モード…24.4km/L
<サスペンション>
フロント…マクファーソンストラット式
リヤ…トーションビーム式
Writer
Gocar Gocar
また、2022年4月より、レディオキューブFM三重(78.9MHz)にて、「Ericar・Gocar Auto Ensemble♪」というラジオ番組のパーソナリティも務めている。